雨宿り

雨宿り





――あ、雨…。

――まいったな。傘持ってきてないのに…。

――あそこに店がある。雨宿りをしよう。



店は喫茶店らしかった。

しかし店の中は暗く、張り紙が扉にある。

――本日都合により休業?

――屋根があるだけでもいいか。



雨宿り、開始。



十分後…

隣りに少女が入ってきた。

――…。

――…。

――…お嬢ちゃんどこから来たの?

――…あっちの方。

少女は俺が走ってきた通りの向こうを指差す。

――今日はお稽古なのかな?

――ピアノ。

――ピアノ?すごいなぁ。

お兄ちゃんピアノなんて全然弾けないよー…。

――…。

――…。



――…………。



俺が沈黙に耐え切れなくなった頃、車が店の前に止まった。

――あ、お母さん。

少女が口走り、車に乗り込む。

――ああ、迎えを待ってたんか。



また数分後。

急いだ様子の男が走ってきて隣りに入る。

――いやぁ、すごい雨ですねぇ。

君も雨宿り?

――あ、俺ですか?

はい、急に降ってきましたからねぇ。

――僕は会社から出たら降っててねぇ。

でも駅まで行かなきゃ帰れないから。

――大変ですね。電車通勤ですか。

――うん。さてもう少し駅まで走るか。

それじゃ、君も気をつけて。

男は雨の中を再び走っていった。



さらに数分後。

――止まないなぁ…。

ふと隣りを見ると美しい女性が立っている。

いつ来たのだろうか…。

よく見るとその女性は泣いていた。

――お嬢さん、どうしましたか?

――…彼氏にフラれたんです。

――彼氏に?それは災難でしたね…。

――…本当はこの店でケーキを一緒に食べようって…!

女性は涙を次々に流す。

――本当に、本当に好きだったのに…!

女性はさらに激しく泣き出す。

――…止まない雨はありませんよ。

きっといいことがそのウチにあります。

――…ありがとうございます。

女性は泣きながら言った。



しばらくして雨は止み、晴れ間が見えてきた。

――あ、晴れましたね…あれ?

女性は消えていた。

――なんだったんだ…?

複雑な心持ちを抱えて俺は屋根から出た。



雨宿り、終了。



数日後、俺はこの店に再び訪れた。

張り紙は扉にはなく、電柱に貼られてこう書いてあった。



――一週間ほど前、この先の交差点で若い女性が事故死しました。

  目撃者は警察まで――



2005.4.18 完



あとがき。



雨宿りをする青年。

そこに居合わせた人間たち。

そんな偶然の中で垣間見える人間模様。

それが書きたくてこの物語ができました。

もともとは大学の授業の一環のシナリオです。

なので少し読みづらいところはご勘弁を。



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