Floweria

Floweria





ふと、すれ違った男の肩から何かが落ちるのを見た。

振り返るとそれが地面に触れるところだった。

(あ…)

それの正体は一輪の花だった。

花の上方に視線を映す。

男が肩に花束を担いで歩いていく。

今の季節、春にふさわしい色とりどりの花々だ。

私との距離はどんどん離れていく。

呼び停めようか。

迷いが頭に浮かぶ。

(でも…)

男の背中を見つめる。

いくつもの花を集めて作られた花束。

その中の一輪がなくなっても気付かないだろう。

私は地面に再び視線を落とす。

その花はまるで群れから外れた子羊だった。

(今の私と同じね)



私は四月の中頃の今になってもクラスに馴染めずにいた。

根っからの内気な性格に加えて、私は転校生。

親の都合というやつだった。

さらに追い討ちをかけるのがクラス替えのない学校の特性だ。

私のクラスの女子はすでにいくつかのグループに分かれていた。

しかしクラスの雰囲気はそれほど悪くない。

ただ一言、声をかければきっと入れてくれるだろう。

私はその一言に勇気が出なかった。



(きっと今の私がいなくなっても誰にも気付かれない)

そう思うと無性に悔しくなった。

私は地面に落ちているその花を踏みつけようと足を上げた。

その瞬間、道端に咲く花が視界に入った。

(え…?)

足をそっと降ろし、見ると道路の裂目に咲いた花があった。

小さいながらも、しっかりとした花をつけた可憐な花だった。

(こんなに小さな花でも道端に根を張り生きているのに。

私は…)



ほんの少しの勇気。

だけど大きな一歩。



「お兄さん!花落としましたよ!」

私はもうだいぶ小さくなった背中を追って走り出した。



今、踏み出すよ――



2005 8 10



ATOGAKI


新作はほのぼの。
タイトルの「Floweria」は造語です。
"flower"と"gloria"(つづり違ったらどうしよう)の。
あれですね、これを書いてた心境としては…
「あー早く夏終わらないかなー」
そういうことで春の物語ができました。
この話、まだ続きます(たぶん)。
三部作ぐらいになるといいな←希望かよ。



HOME
本・漫画・DVD・アニメ・家電・ゲーム | さまざまな報酬パターン | 共有エディタOverleaf
業界NO1のライブチャット | ライブチャット「BBchatTV」  無料お試し期間中で今だけお得に!
35000人以上の女性とライブチャット[BBchatTV] | 最新ニュース | Web検索 | ドメイン | 無料HPスペース