夢語Another Story〜嘘夢〜
夢語Another Story〜嘘夢〜



首筋に痛みが走る。

「動くなよ。すぐに楽になる…」

後ろから男の声。

(ヒロ君じゃ…ない)

首筋に再び痛みが走ると同時に視界が黒く染まっていった。

次に映し出されたのは一人の少年の姿だ。

その少年は手にカッターナイフを持っていた。

(!ヒロ君…!駄目…!)

願いも空しく少年は自分の手に赤い線を引く。

目の前で少年は倒れた。

(…ごめんなさい…)



目が覚める。

いつもの部屋のいつもの天井。

どうやら夢だったらしい。

私は溜め息をついた。

なんてひどい夢だろうか。

今巷で噂になっている通り魔殺人犯。

それに殺されてしまう夢。

妙にリアルだった。

首筋に刃をあてられた感触。

低い男の声。

すべてが記憶に残る。

しかも…

(ヒロ君との待ち合わせの公園か…)

私には付き合っている人がいた。

いつも公園で待ち合わせて帰る。

ただそれだけのこと。

それだけで幸せだった。

それに…。

私はカレンダーに視線を向ける。

12月に入ったばかりの今日。

次のカレンダーは飾られないのだろう。

そう思うと少し悲しくなった。

(…あと一か月…)

私の命は年を越す事ができないらしかった。





「優!」

「ごめんね遅くなっちゃって…」

「いや全然」

ヒロ君は私の事を優と呼ぶ。

本名ではない。

私の名前は優美花。

ヒロ君はその名前の一部をとって呼ぶ。

私もヒロ君と呼ぶ。

ヒロ君の本名は一弘。

この名前で呼び合うときは二人だけの時間。

そんな気がして嬉しかった。

「…行こうか」

「うん!」

この幸せな時間もあと一か月だ。

ヒロ君には言っていない。

予想できる、しかも避けられない別れ。

それを口にだすのはあまりに悲しすぎた。



それは突然だった。

何が起こったのか。

分かってはいた。

この方がよかった。

けれどどこかさびしい…。

私はヒロ君と喧嘩をした。

内容はどうでもいいような言い争い。

始めは仲直りする気はなかった。

私の命はあと二週間ほど。

ヒロ君を悲しませたくない。

好きな人がいなくなるよりは嫌いな人がいなくなるほうがいい。

だから嫌いになってもらおう。

それで終わろう。

けれど…

脳裏にはヒロ君の笑顔。

私を呼ぶ優しい声…。

(やっぱり駄目。

 ヒロ君に謝ろう。

 すべてを話そう。

 そして最後まで笑顔でいよう…)

私はヒロ君への手紙を書いた。





次の日、いつもの公園にヒロ君はいなかった。

喧嘩の次の日。

やはり怒っているのだろうか…。

私はベンチに腰掛けた。

手には手紙を握り締めて。

けれど一時間が経ってもヒロ君は来なかった。

時計が五時を回り、辺りを見渡し気がついた。

(あの時の夢…!)

そう、その光景は私が殺される夢に似ていた。

そして悟った。

ヒロ君は来ないのだろう。

私は殺されるのだろう。

今すぐ帰れば大丈夫だ。

しかし…。

(ヒロ君が来てくれるかもしれない。

 来た時に私が居なかったらヒロ君はどう思うだろうか)

時間はどんどん過ぎる。

ふと、足音が背後から聞こえる。

鼓動が早くなる。

(ヒロ君…!

 優は…幸せでした…。

 ごめんなさい…そして…)

「優!」

そのとき、奇跡の風が吹いた。





目が覚めた。

いつもの天井ではない、暗い空間。

――目が覚めたようですね。

かたわらから声が聞こえる。

起き上がると少女の姿をしたそれに気付く。

この少女が普通の少女でないことを私は知っていた。

――見たい「夢」は見れましたか?

そう、これは夢だった。

私は通り魔に殺された。

あの夢が現実だった。

「はい…。

 ありがとうございました」

――私は夢鳥。

  人に見たい夢を見せるのが仕事ですから。

そう言って“夢鳥”は何もない空間から立ち上がる。

――それでは行きますか?

「…あの…ヒロ君はどうなるんでしょうか」

私が見た夢ではヒロ君は自殺をしてしまった。

彼を死なせたくはない。

すると夢鳥は手のひらに乗る程度の光の玉を出す。

――どうぞ。

夢鳥は私に玉を差し出した。

私がその玉に触ると視界が白く染まっていった。

視界が元に戻るとそこは病院の一室だった。

少年がベッドに身を起こしている。

読んでいるのは…私の日記だった。

『俺は優の代わりに笑顔でいる』

あの人の心の声が聞こえた。

『見た人が笑顔になれるやつになる』

(ヒロ君…!)

『な?いいだろ?優…』

(ありがとう…

 優は…本当に幸せでした)

再び目を閉じ、開ける。

「ありがとう…ございました」

――いいえ。

  仕事ですから。

  心の準備はできましたか?

「…はい。行きましょう」

私は心の中であの人に、

そしてこの世に別れを告げた。



さようなら。

そしてありがとう。





  あとがき。

読んで字の如く夢語の番外編?です。

夢鳥。人に見たい夢を見せる者。

この夢鳥というネタ(?)は去年から頭の中にありました。

原作が別にあります。

そっちは書いてて上手くいかなかったのですが…。

たぶん夢鳥はまた出します。

今そっちのほうのネタも打ち込んであるのでそのうち。

この番外編を作る話は夢語ができたころからありました。

今まで打ち込んでなかっただけですね(←コラコラ)

だから完成した時の日付がだいぶ前なんです。

夢鳥の話も早くアップしよう!うん。

ということでひとりごとでした。



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