魔王という名のセイレーン




とある洞窟の中、息をひそめている影があった。
空は白み始めていたが、洞窟の中までそれは届かなかった。
そして、そこに一人の青年が足を踏み入れる。
「…シュベルツ」
「…」
シュベルツと呼ばれた影は目だけを動かした。
その様子は、一触即発というものにふさわしく思われた。
「…ほら」
青年が手を出した。
そこには眼鏡があった。
「全く…また散策に夢中になって忘れてったでしょ」
影は素早く青年に駆けより眼鏡を受け取る。
「ああ、助かりました…」
「…」
「…」
「…ふふっ」
青年が最初に笑いをもらして、その場の空気が溶け始める。
「笑わないでください、マスター」
「だって、光の中だと僕特製の眼鏡がないと歩けないのに」
青年はシュベルツと呼ばれた影に背を向ける。
その様子はまるで、友達同士の会話だった。
「だから夜のうちに出発したんですよ…」
「でも、夢中になって、明るくなっちゃったじゃん」
まるで、ではない。
二人は友達だった。
「…一応前よりはマシかと」
「まぁね。でもねぇ…ふふふっ」
「…と、とりあえず、帰りましょう」
「うん。行こうか」
眼鏡をかけて洞窟の外に出た影は、人間というにはあまりに美しかった。
なぜならば、影は、人間ではなかったからだった。


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