出会い

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「お父さんなんて嫌いだ…」

私は湖に向かって呟いた。

水面には黒い翼を持った少女が映る。

私はいつものように怒られてここに来ていた。

私はいつも仕事に失敗してはここに来ていた。

その仕事はイタズラをすること。

私は悪魔の子だった。

『ポチャン…』

涙が落ちる。

水面が揺いで一瞬翼が消えたように見えた。

そろそろ戻らなければ。

また怒られてしまう…。

立上がると後ろで物音がした。

「誰?」

振り向くと、そこに男の子が立っていた。

私は二、三秒目を奪われた。

少年は水晶のような青い瞳、それに抜けるような白い肌をしていた。

「黒い翼…」

少年の声で我に返る。

「…悪魔?」

(しまった…!)

私は翼を広げて飛び立った。

悪魔は人間から忌み嫌われる。

殺されることもあると聞いたことがある。

「綺麗な黒…」

(え?)

飛び立つ直前、うっすらと聞こえた。

空から振り返ると少年は微笑んでいた。

その表情を見て、何故か恥ずかしくなった。

私は一層高く舞い上がり、家へ向かった。

熱くほてった顔を手でおさえて。



悪魔の世界は人間の世界とは違う。

いわゆる異世界だ。

一日中人間でいう「夜」という空間が広がる。

私は空に開けられた通路からこの世界に戻った。

地上にある家へ向かう。

家の前には女の人が立っていた。

「…お姉ちゃん」

「ルカ、あんたまた失敗したんだって?」

女は悪魔らしく意地悪そうに笑った。

背が高く、ワインレッドのロングワンピースがよく似合う。

お姉ちゃんはお父さんの自慢だった。

「…」

私は俯いて自分の着ている黒いスカートをつまんだ。

「そんな顔するんじゃないよ。

お前はほんとに悪魔らしくないねぇ」

お姉ちゃんは背中まである髪をかき上げた。

黒い髪と翼は悪魔の象徴だ。

私の髪も肩まである。

「とりあえず中に入りな。

明日も仕事だ」

お姉ちゃんは玄関へ入って行った。

私もそれに続く。

ドアの上に飾られた水晶を見た。

それは湖で会った少年を思い出させた。

(『綺麗な黒』…か)



次の日も仕事が終わって湖に行った。

私はこの空が好きだった。

湖に映る晴れた青空。

悪魔の世界では見られない空だった。

この人気のない湖に映る空。

それは私だけが知っている。

私だけの空のような気がしていた。

湖には誰もいなかった。

湖のほとりの木の根元に腰掛ける。

「…見つけた」

後ろから声がした。

昨日の少年がそこにいた。

驚いて立ち上がると少年が腕を掴む。

「なんで逃げるの?」

 少年は私を真っ直ぐに見つめていた。

「…悪魔の子だから。

気味悪いと思わないの…?」

「綺麗だよ。

 夜の色だ」

私の顔はまた赤くなった。

私の中には感じたことのない感情があった。

「どうしたの?」

少年が私に尋ねる。

「怖く…ないの?」

「全然。

 かわいいよ」

またあたたかな感情が私の中に広がる。

「…あ、ありが…とう?」

「どういたしまして」

私はすっかり逃げる気をなくしていた。

少年も私の腕を放した。

代わりに自分の胸に手を当てた。

「僕は璃空(リク)。

 君の名前は?」

「…ルカ」

「ルカ。

 明日、また会おうよ。」

――悪魔と人間は決して相容れない。

時には殺されてしまう――

「うん…いいよ」

こうして私は璃空と遊ぶようになった。

私のソラのほとりで…



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