森に咲く花

森に咲く花





前編



(怖い…?)

布団の中から薄暗い天井を眺める。

俺は病のふちにいた。

余命はあとわずか。

彼女の命を奪った病に俺もまた、侵されるなんて。

なんて皮肉な運命だろうか。



(俺はまだ、あいつのために生きなきゃならないんだ)

彼女を失ったとき、もう怖いものなんてないと思った。

実際、彼女がいない世界はモノクロに等しかった。

けれど彼女の分まで生きようと、躍起になって過ごした。

危険なこともあった。

毎日が生きることさえ辛いこともあった。

それに比べれば死なんて怖くない。

(じゃあ何で死を受け入れられない?)

その問いの答えは認めたくない。

涙がにじむ瞳を閉じると俺は深い夢の中へと落ちていった。



(ここはどこだ。

 俺は死んだのか…?)

俺は不思議に光が満ちている森に立っていた。

空気は澄んでいて、体が軽い。

(美しい…。

 ここは、天国なのか?

 それともただの夢だろうか?)

ふと、足元を何かがかすめていった。

見るとリスのような動物がいた。

どうしてか、俺の顔を懸命に見つめている。

俺がつられてその瞳を覗き込むとリスは森の奥へと駆けていった。

しかし数歩進んだところで止まって俺の顔を再び見る。

(…ついてこいって?)

俺が足を進めるとリスはまた駆けていき、止まる。

その繰り返しだった。

(俺をどこへ連れて行くのか…?)



森の中へどんどん進んでいくと、岩肌に突き当たった。

岩肌には穴があいていた。

人が入れるぐらいの穴だった。

リスはその穴に入り、再び駆けていく。

俺も仕方なくその穴に入ると中は広く、洞窟のようになっている。

奥のほうから光る粉のようなものが漂い、さらに光が漏れていた。

そのおかげで足元はわずかに暗いばかりで十分に歩くことができる。

気が付くとリスはいなかった。

俺は迷った。

このまま奥に進むべきだろうか。

その時、何かが俺を呼んだ。

声ではない、直感だった。

(…ここまで来たら進むしかないだろう)

俺は再び奥へと足を進めていった。

しばらくすると、広いところに出た。

そこにはこの世のものとは思えないぐらいに美しい鳥が羽を広げていた――



――おぬしは誰じゃ…。

俺はさっきと同じように直感的にその声を聞いた。

(この鳥は…まさか)

「鳳凰…?」

昔、授業で学んだ鳳凰伝説。

俺は目の前にその挿絵そっくりな鳥を見ていたのだ。

そしてその鳥は…。

――鳳凰、という名もある。

  わらわは不死鳥とも呼ばれておるものじゃ。

そう。不死鳥。死なない鳥。

その生き血をすすると不老不死を得られると言われている。

「…頼む!俺に血を分けてくれ!!」

俺はそう叫んでいた。

――不死を望むか?

それを聞いた鳥はわずかに視線を動かす。

その瞳はまるで水晶か何かのように青く透き通っていた。

「俺はっ…あいつの分まで生きなければならないんだ…!」

――何故不死を望む?

  不死を得ることで何を得る?

「だから俺はあいつのために…!」

――その者が本当にお前の不死を望んだか?

(え…?)

俺は何も言えなくなった。

鳥は少し悲しそうにしているように見えた。

――そもそも、死というものはなんであろうか…?



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