音に咲く花

音に咲く花



後編




「私は…あの子に謝りたいんです」

――なぜ?

「私はあの子にひどい事を言ってしまった。

 あの子に罪はないのに…」

あの子はただ、正直だっただけだ…。

謝りたい。

けれどそれは許されない。

「…わがままですね。

 私は死んでいるのだから駄目ですよね…」

――あなたにはあの声が聞こえませんか?

「え?」

言われて、耳を澄ませた。

『みゆさん!

 しっかりしてください!

 みゆさん!』

――いなくてもいい人を心配なんてしませんよ。

「でも…私は…」

――あなたは死んでいませんよ。

少女の無表情が悪戯をした子のように見えた。(生きている?

私は・・・)



――戻りたいですか?

(戻れるんだ。

元の世界に。

あの子の元に・・・)

「ありがとうございます…」

私は泣いていた。

次から次へと涙は流れていた。

――私は何もしていませんよ。

  さぁ、目をつぶってください…。

私の視界は真っ暗に染まった。





「みゆさん!」

目を開けるとあの子の顔がすぐ近くにあった。

「あれ…?

 どうしたの?」

「階段から落ちたんですよ!

 分かりますか?」

私はゆっくり体を起こした。

言われてみると、確かに体中が痛かった。

「まったくビックリしたじゃないですか…心配したんで」

「ごめんなさい」

ふと口をついて言葉が出た。

すると目の前の少年が怪訝そうな顔をした。

「ナニがですか?」

「え?えーと、…」

何故か謝らなくてはいけない気がしたのだ。

理由を示す記憶はなかった。

私は階段から落ちる前の記憶がなかった。

「やっぱり頭打ったんじゃ…。

 まぁおかしいのは元からですが」

「何それ!ひどい!」

私がむくれていると少年は立ち上がり歩き出した。

私も立ち上がり階段を上る。

すると少年は口笛を吹き始めた。

少年の少し伸びた後ろ髪は少女のようにも見えた。

私はそれを見て何か心にひっかかるものがあった。

「…私、夢の中でだれかに会った気がする」

「は?何言ってるんですか?」

自分自身なぜそんな事を言ったのかよく分からなかった。

夢など見たはずもない。

「…なんでもない。

 きっと気のせいだね」

そう呟いて私は階段を上り続けた。

たぶんそれはあの子の口笛の音に咲いた一瞬の

夢のような記憶だったのだろう。



『…やっぱり私、君の音楽好きだな…』

『いきなりなんですか?!

 気持ち悪い…』

『ん?なんでもないよ…』





―音に咲く花 完―





あとがき。

これはだいぶ前に書いたものを書き直したものです。

最初はハッピーエンドにしてませんでした。

ここだけの話、『相手を殺して自分も死ぬ!』というものだったんです。

なぜそれが今のような形になったのか。

それは自分の中の夢鳥と出会った事で自分も変えてみたくなった。

…そういうことにしておきましょう。

ちなみに名前のないこの少年、モデルが実在するんですね。

でもこの物語の関係はフィクションですのであしからず。





HOME/他の夢鳥も読む?/BACK
本・漫画・DVD・アニメ・家電・ゲーム | さまざまな報酬パターン | 共有エディタOverleaf
業界NO1のライブチャット | ライブチャット「BBchatTV」  無料お試し期間中で今だけお得に!
35000人以上の女性とライブチャット[BBchatTV] | 最新ニュース | Web検索 | ドメイン | 無料HPスペース