「シュベルツ!手を離せ!!」
その手首からは、赤い液体がにじみだしていた。
シュベルツは自分の手首に爪を立てていたのだ。
そう、血が出るほどに。
「あ…つい」
「つい、じゃないよ!いつもこんなことを?」
僕はシュベルツの両の手を握り、顔を見る。
こんなにも色が白いのはセイレーンだからなのか、それとも。
(自分を責めるあまりに、自分を自分で追い詰めていたのだろうか?)
シュベルツはうつむいた。
その瞳は悲しみを帯びていた。
「私はもう、誰かを傷つける歌を歌いたくないのです…」
「でも、さっきの歌は、綺麗だった!」
シュベルツはその言葉に、少し顔をあげた。
そして、言った。
「不思議なのですが、何故、ミュージは私の封印を?」
「僕は、小さい頃、誰かに魔王という名のセイレーンがいるって聞いた」
シュベルツの手首に包帯を巻きながら僕は語る。
「誰にも歌ってもらえない歌、だけど、セイレーンは歌が生業だから歌えるかもって」
もう、誰に聞いたのか、分からないけれど。
その記憶は、あまりにも古すぎて。
でも、これだけは言える。
「さっきの歌は、綺麗だったんだ。僕は、シュベルツが必要だから、もうこんなことしないで」
「ミュージ…」
(ああ、セイレーンなのに、その手は暖かくて、僕らと同じように、赤い血が出て…)
僕は、シュベルツの歌に、シュベルツの心に、こうして惹かれたのだった。
歌が歌いたいシュベルツ。
歌を歌ってほしい僕。
契約なんてなくても、それだけで十分だった。


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