08

「ミュージとシュベルツ…ミュージとシュベルツ…」
彼女が、うわごとのように呟いているのを私は見ていた。
何回か彼女と会う内に、彼女が異常なメモ魔であることが分かった。
でも、それだけじゃないような気がしていた。
それをミュージに尋ねると、ミュージも気になってはいるようだった。
『だけど…レティが話してくれるまで待とうよ』
そう言われると、私は何も言えない。
私がセイレーンであることも黙っていたから。
『それに、なんとなく僕は分かった気がした』
言ったミュージは今はピアノに向かっていた。
自分の詞ではないものに曲がつけられると聞いて、はりきっていたのを私は見た。
(しかし…)
彼女と二人きりも、同然のこの状況。
会話がないのが不自然すぎる。
(ああ、こんなことならミュージから文字を習っておけばよかった…)
悔やんでみても、それこそアトノマツリというやつだ。
彼女の方はあまり気にしてないようだが。
それどころか、メモを一枚一枚読んでは紐でくくる、その作業を繰り返していた。
ふと、その内の一枚がひらりとこちらに飛んできた。
(あ…)
彼女は気付いていないようだ。
(渡すだけ、渡すだけ、だから、大丈夫だ…)
少し緊張してメモを取った。
その時、その文字列が音となって私の中に入ってきた。
「忘れたくな…い…?」
思わずそれを口にしてしまって気がついた。
レティと、ミュージがこっちを見ているのを感じた。
(…!しまった)
レティは、無事だろうか?
すぐにはメモから目を上げられなかった。
「シュベルツ…大丈夫みたいだよ?」



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